東京高等裁判所 昭和27年(う)1630号 判決
弁護人の所論によれば賍物牙保罪は被害者が賍物の返還請求権を有することを要し従つてその被害者は何人なるか且つその被害者は物件の正当の所持人であるか否かを確定することを要する。然るに原判決がこれを確定することなく、賍物牙保罪の成立を認めたのは理由不備若くは審理不尽の違法がある旨主張するけれども、賍物牙保罪の成立する為めには、客観的には賍物の存在することを要し、主観的には賍物であることの情を知り乍らその賍物の処分の斡旋を為すにある。さればその賍物の被害者が果して何人であるか否か又正当の所持人であるか否かと謂うが如きは同罪の成立には毫も関係なく、所論は独自の見解であつて到底採用し難く、此の点の論旨はその理由がない。既に然らば前記の要件を具備している以上、賍物が転々として何人の手裡にあるか否か又何人がその賍物につき所有権を得たか否かも固より問うところではなく此の点の論旨も亦その理由がない。所論によれば、判示大島富雄が内野貞雄より本件賍物を買受け所有権を取得したものであるとすれば、該賍物は賍物たる性質を失う旨主張するけれども、仮に所論の如く大島が内野より本件賍物を善意無過失に買受け民法第一九二条により即時収得したとしても、同法第一九三条により被害者がその物の回復を請求し得る間は賍物たる性質を失うことなきものと解するを相当とすべく、所論は独自の見解であつて到底採用し難く、論旨は総べてその理由がない。